賃貸の契約は二年毎に更新ブログ:2016年09月15日


あれはあたしが小学3年生の秋、
窓を閉めて寝る季節のことだった…

母はよる9時から10時の間に自分の部屋にこもり、
「決して襖を開けてはいけない」と言った。
あたしはそれに従った。

だけど、それにしても、
一体、母は何をしているのか?
なぜあたしは見てはいけないのか?
何か秘密でもあるの?…
そのうちだんだん妙な疑惑と不安がのしかかってきた。

もしかして、
母は「鶴の恩返し」に出てくる鶴ではないか?
隠れて織物を織っているのではないか?

実は「雪女」で、襖を開けたら、
真っ白の風にくるまれ、消えていくのではないか?
あたしは、そんな化け物から生まれたのか?

怖いやん…めちゃ怖くて、泣きそうやん…

こんな秘密を持つなんて、
きっと母はあたしが嫌いなんだ、
実の娘じゃないからだ。

あたしはなんてかわいそうな娘だ。
…泣きたくなって、襖を開けてしまった。

すると、母はなんと腹筋体操の真っ最中!

「こら、開けたらあかんて言うたやん」
もうすぐ体操会で、
母は、競争に勝つために特訓中なのだった。

「あんたがおったら集中でけへんから、ひとりでやりたかったのに〜、
もうええわ。やめよっ!」
と、食卓に来てお茶を飲んだ。

そこで、べたべたとくっつく、
しけたしょうゆのあられを一つずつ5本の指先につけ、
指をなめずに食べた…
これ、母とあたしのお気に入りの食べ方。

「いつものことやけど、こうして食べたら、おいしいなぁ〜」
と笑う母。

で、あたしは5本の指を寄せて、
5つのおかきを同時にクチに入れるという技を極め、
母の絶賛と大笑いを得たのだった。

こんなことで絶賛してくれるのは実の父母以外あり得ない。
間違いなくあたしは母のお子さんだ!
すごく嬉しくて、そして、涙がとてもしょっぱかった。

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